うなぎの蒲焼
今年もこの時期がやってきた
土用の丑の日である
鰻屋 魚屋にとって1年で一番忙しいのが
この日までの3日間ほど
全国の鰻屋や魚屋が大汗をかいて
必死こいて焼く
江戸時代の後期 経済が安定し始めると ふだんの食事にも
胃袋を満たす以上の食が求められるようになる
そこで洗練され独自の進化を遂げたのが
すし
天ぷら
そば
うなぎ
腕利きの料理人が現れると 食べ手にも粋人が現れる
この両者が出会うことにより 食の世界が急速に発展する
日本料理の基礎が出来上がった江戸時代
この時代の江戸四代食の一つにうなぎがある
特にこの鰻の蒲焼という調理法を発見できていなければ
日本人にこれほど歓迎されることはなかった
と思われるほど 鰻をうまく調理したものだと思う
この蒲焼ひとつとっても職人たちのこだわりはそれぞれ
うなぎの裂き方 焼き方だけでも 関東 関西 の東西に二分
するほどこだわり方にも差が生まれた
『串打ち三年 割き(裂き)八年 焼きは一生』といわれるように
うなぎの技術はとても奥が深く これを習得するに一生をかける
では なぜ串を打つのか
これは炭火の力を最大限に活かすためである
BBQのように網の上で焼くのではなく ガス火を使い上から焼くのではなく
串を打って炭火で下から焼くことに意味がある
なぜ網の上で焼くのがダメなのか
それは単純に網が炭火の火力の邪魔をするから
うなぎを刺した串の先端と串の持ち手側を焼き台に直接
引っ掛けるように置く 真下に炭火がある状態
この状態が炭火の火力 持ち味を一番発揮できる
うなぎのみならず魚全般の火加減というのは実を言うと
非常に難しい
単に塩焼きといってもやり方 焼き時間で味に大きな差ができ
一般的な煮魚に関しては鍋に火をかけてから15分で仕上げても
(鍋の水は常温)決して早すぎることは無い
うなぎも同じで長時間火にかけて旨みが増すということはまず無い
それどころか時間をかければかけるほど 魚の脂と水分はなくなり
確実にまずくなる
つまり焦げ付かせないための安全策をとって弱火でじっくり
焼いていこうというやり方では
私はこれより この魚の脂と旨みを 取り除いてごらんに入れます
といっているようなもの
魚の皮目がこんがり色付いたと同時に中心部まで火が
通るくらいの焼き加減
火力が強しぎると表面だけが焦げ付いてしまい中身は生焼け
逆に弱火で時間をかけすぎても 見た目だけが出来の良い
食べてまずい焼き魚が出来上がる
しかもこれが火加減の調節しにくい炭火を使うとなると
なおさら難しくなるのは当然
そして うなぎの蒲焼で一番大事なのがタレ焼きを
行なう前の工程である白焼き
職人はこれを最高の状態に仕上げてくる
つまり この白焼きがうまくできなければタレ(照り)がのらない
見た目も味も悪くなる
よくスーパーなどで見かけるのがこの状態
おそらく焼きたての時は後からハケなどを
使って塗ったタレが何となく見た目をよく
してくれていたのだと思う
しかし トレーに入れてパックをし時間が
経過すると焼き手の手抜きが見えてくる
タレが全て落ちてしまうのだ
これは明らかに白焼きで手を抜いたから
ただ手を抜いて仕上げを急いだに他ならない
しかもこれがプロとしてお客様から
お金を頂いて購入してもらう商品として
1パック約2,000円から3,000円程の価格で
店内に並んでいる
最近の土用の丑の日の気にかかっているひとつ
職人の一尾一尾と真剣に向き合い最高の状態で
自分の焼いたうなぎを食べていただこうという
想いとはかなりかけ離れていると感じる
もちろんキレイに焼いてある蒲焼もある
全てを指しているわけではない
タレ焼きとは
白焼きをしたうなぎにタレをかけ 照りをつける工程
基本 外はパリッと 中はふっくらに仕上げる
中のふっくらを残しつつ外側のみにタレをのせるイメージ
つまりタレをかけすぎてしまってはせっかくふっくら焼いた
白焼きが台無しになる
火力もかなり重要
火が強いとすぐに焦げて使い物にならなくなる
最後の仕上げであり 気の抜けない工程
白焼きとは
うなぎにタレを短時間でしっかりのせるための
うなぎの蒲焼で一番重要な工程
うなぎの身に熱が加わると
表面は白くなり ツルっとする
この時点でタレ焼きにかかると
タレがまったくのらない
思うようにタレがのらないため
時間をかけ何度もタレをかける
そのため身の内部にまでタレがしみ込み
仕上がりがベタッとなる上に
時間が経つとタレが落ちる
表面はこんがりキツネ色に焼き目を入れ
身から脂がジュヮっと出ている
熱々の状態でタレ焼きに入る
うなぎの身の表面の温度は
この状態がピーク
ここにタレをかける事により
炭の火で焼く前に
身がタレを焼いてくれる
この工程をしっかりやれば
冷めてもタレは落ち
以上の工程は簡単に書いてはあるが 実際にやってみるとやはり難しい
何度も何度も経験を重ねていかないとなかなかできるものではない
うなぎは安価なものではなく
月にうなぎを何度も食べられる人はそうはいない
もしかするとあなたが焼いた1本が誰かの
年に1度のうなぎなのかもしれない
誰かへのプレゼントにあなたが焼いたうなぎを
選ぶのかもしれない
何度もイメージし理想に近いうなぎが焼けるようがんばっていただきたい
愛知県三河一色産うなぎ
土用の丑の日は夏真っ盛り
暑さが厳しく夏バテしやすい時期
この時期食べるうなぎは
夏を乗り切る励みにもなり
そういう思いで毎年日本全国たくさんの人が
うなぎを求めて動きに動く
自分は毎年愛知の三河のうなぎを使う
色んなところのうなぎを見て食べてきたが
ここのうなぎが1番 味が良かった
数が揃わず 他の県のうなぎを試して見たが皮が硬いとか
身に味がないとか同じサイズのはずなのに身が小さく見える
などいろんなことが重なって他のうなぎが見れなくなった
なのでお勧めするのは断然三河 うなぎはここだと思っている
そして特に気になっているのが 『アオテ』 といううなぎ
なかなか出会えない希少なうなぎで肉質がとてもやわらかく
うなぎ本来の美味を味わえるのだそう
といっても希少なうなぎ 年に何度も食べられない
というより何度も食べてはダメなのではないかとも思う
年に1度の記念日やお世話になっている方へのプレゼントなどに
するととても喜んでもらえる
価値のある鰻だと思う
なので自分も今年の誕生日は嫁さんにお願いして食べてみようと思う